精神の分野における障害年金の遡り請求について
障害年金コンサルタント、社会保険労務士の中島です。
「遡って支給されることがある、と聞いたのですが、私は該当しますか?」というお問い合わせが多く、今回は、精神の分野における障害年金の遡り請求について、という題で、書いてみたい、と思います。
判断の対象となる時期に通院や入院をしているか、どうか
障害年金の遡り請求については、以前、判断の対象となる重要な「時期」、遡り請求と事後重症請求、でも書きましたが、一部の例外を除き、以下の1.~3.の期間で、通院や入院があり、その時点の診断書によって、障害の状態として認められた場合、支給されます。
初診日が、20歳の誕生日の前日以後にある方、もしくは、
厚生年金保険等に加入している間(お勤めされていた期間)にある方は、
1.→障害認定日以後3ヵ月以内。初診日が、20歳の誕生日の前々日以前にあり、かつ、
厚生年金保険等に加入している間(お勤めされていた期間)にない方で、
障害認定日が20歳の誕生日以後にある方は、
2.→障害認定日の前後3ヵ月以内。
障害認定日が20歳の誕生日前日以前にある方は、
3.→20歳の誕生日前日の前後3ヵ月以内。
遡り請求を行う場合は、初診日と障害認定日の位置付けをご理解いただいた上で、判断の対象となる重要な時期に、まず、通院や入院があるか、どうか、確認が必要になります。
(請求手続き以前に、そもそも、この時期に、通院や入院自体をしていなければ、この期間のカルテが元から無いことから、請求手続きに必要な診断書作成の依頼を行うことができない、ということになるからです。)
判断の対象となる重要な「時期」の診療録(カルテ)が残されているか、どうか
通院や入院をしていた、ということであれば、次に、医療機関が診療録(カルテ)を保管しているか、どうか、が重要になります。
法令では、5年間の保管が規定されていますが、5年が経過した後に残しておくか、破棄するかは、医療機関の判断次第となりますので、この部分については、運、の要素が入ります。
調べていくと、「残っていなかった」「破棄されていた」等、どうしようもない状況になっていることもあれば、20年、30年前でも、「残っていた」ということもあります。
判断の対象となる重要な「時期」の体調はどうか
通院はしていたが、日常生活やお仕事に制限を受けている状態であったか、どうか、また、その時点の病名はどのように診断されていたのか等、調べていく必要があり、障害の状態に該当するか、どうか、手続きを進めていくことで分かることになります。
遡って支給される期間について
遡って支給される場合は、「障害認定日の属する月(もしくは、20歳の誕生日の前日が属する月)の翌月」から経過した期間の分、となります。
ごくたまに、「通院が始まって1年半経ちました。遡って、障害年金は貰えますか?」というお問い合わせや、「中学生の頃から通院が始まり、20歳になりました。遡って、障害年金は貰えますか?」というお問い合わせがあります。
これは、障害年金はいつから請求できるか、ということをご理解いただいていないため、「初診日から貰えるもの」という誤解からお話をされているのだと思いますが、
「初診日の属する月」から経過した期間の分、ではありません。よろしくお願いいたします。
(障害年金は法令上、まず、障害認定日の時点での請求を想定しており、その時点で、障害の状態ではない、ということであれば、その後、悪化した、という形の中で、現在の症状で請求する、という流れを辿るのですが、「通院を開始して、1年6ヵ月が経過した(もしくは、20歳になった)ので、障害年金の請求をしよう。」となる方は一部で、多くの方は、そのまま通院等治療が続き、しばらくしてから、「本当に体の具合が辛いので、障害年金を請求しよう。ん?遡って支給されることがある?」と気づき、そこで、ようやく、障害認定日の属する月の翌月から現在まで、遡って支給される可能性がある期間が判明します。)
まとめ
障害認定日による請求(遡及請求)は、様々な角度から検討し、手続きを進めていく必要があり、決して、簡単なものではありません。
当事務所では、お客様にとって最適な障害年金請求の手続きをご案内しておりますので、何か不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。
参考1 国民年金法
第三節 障害基礎年金
(支給要件)
第三十条 障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
一 被保険者であること。
二 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、六十歳以上六十五歳未満であること。
2 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級及び二級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。
第三十条の二 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日において前条第一項各号のいずれかに該当した者であつて、障害認定日において同条第二項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後六十五歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第一項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
2 前条第一項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。
3 第一項の請求があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、その請求をした者に同項の障害基礎年金を支給する。
4 第一項の障害基礎年金と同一の支給事由に基づく厚生年金保険法第四十七条又は第四十七条の二の規定による障害厚生年金について、同法第五十二条の規定によりその額が改定されたときは、そのときに同項の請求があつたものとみなす。
第三十条の四 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において二十歳未満であつた者が、障害認定日以後に二十歳に達したときは二十歳に達した日において、障害認定日が二十歳に達した日後であるときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは、その者に障害基礎年金を支給する。
2 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において二十歳未満であつた者(同日において被保険者でなかつた者に限る。)が、障害認定日以後に二十歳に達したときは二十歳に達した日後において、障害認定日が二十歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、六十五歳に達する日の前日までの間に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
3 第三十条の二第三項の規定は、前項の場合に準用する。
参考2 厚生年金保険法
(障害厚生年金の受給権者)
第四十七条 障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。以下同じ。)があるときは、その日とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
2 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級、二級及び三級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。
第四十七条の二 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者であつて、障害認定日において前条第二項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後六十五歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第一項の障害厚生年金の支給を請求することができる。
2 前条第一項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。
3 第一項の請求があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、その請求をした者に同項の障害厚生年金を支給する。