保険料の免除と障害基礎年金の年金額について
障害年金コンサルタント、社会保険労務士の中島です。
今回は、保険料の免除と障害基礎年金の年金額について、という題で、書いてみたいと思います。
(複雑になることを避けるため、老齢基礎年金における受給資格期間の詳細、老齢厚生年金、障害厚生年金を受けられる場合、基礎年金の国庫負担に関する経過措置の特例、国庫負担額の詳細、20歳前の傷病による障害基礎年金の給付に対する国庫負担割合等については、考慮しません。)
国民年金の保険料には、保険料の免除制度があります。
これは、届出さえすれば、「保険料を一部、もしくは全額、納付しなくてもいいですよ」ということになる制度です。
免除される保険料の額は、「全額」、「4分の3」、「半額」、「4分の1」、と分かれており、更に、「全額」の中に、
「法定免除」※1、「申請全額免除」、「保険料納付猶予制度」、「学生納付特例」、そして「産前産後期間の保険料免除」という種類があります。
この「免除」が、年金額へ与える影響ですが、
老齢基礎年金の場合
「法定免除」「申請全額免除」となった期間の分は、老齢基礎年金を貰う際、保険料を半額(8分の4)納付した、というカウントがなされます。(もし、20歳から60歳まで全て「法定免除」「申請全額免除」ということであれば、老齢基礎年金を貰う際、保険料を全額納付した方の「半分」の年金額となる、ということになります。)
同じく、「4分の3」免除となった期間の分は、老齢基礎年金を貰う際、保険料を8分の5納付した、というカウントがなされ、「半額」免除となった期間の分は、老齢基礎年金を貰う際、保険料を8分の6納付した、というカウントがなされ、「4分の1」免除となった期間の分は、老齢基礎年金を貰う際、保険料を8分の7納付した、というカウントになります。※2
これは、「8分の4」は国で負担することになっており、「残りの8分の4」について、保険料を納められなかった分だけ、年金額が一定の額から減る方式(これを、フルペンション減額方式、といいます)になっているためです。
尚、「保険料納付猶予制度」「学生納付特例」となった期間の分は、全額、保険料が免除されますが、「8分の4」について、国の負担が無く、納付可能な期限までに、保険料を納めない限り、老齢基礎年金を貰う際、保険料を納付した、というカウントはありませんので、免除を申請する際には、注意が必要です。
(老齢基礎年金には「受給資格期間」の考え方があり、10年以上の「加入期間」が必要になりますが、「保険料納付猶予制度」「学生納付特例」は、納付可能な期限までに、保険料を納めなくても、「加入期間」にはカウントされます)
また、2019年4月よりスタートした「産前産後期間の保険料免除」となった期間の分は、保険料を全額納付している、というカウントがなされます。(任意加入被保険者の方を除きます)
障害基礎年金の場合
障害基礎年金では、「保険料を納めていたこと」になれば、保険料を全て納めていても、全て免除でも、障害の等級によって、金額が決まっているため、年金額への影響はありません。
障害の等級が同じであれば、「法定免除」や「申請全額免除」等で、「保険料を納めていたこと」になっている方と、保険料を全て納めていたことで、「保険料を納めていたこと」になっている方の年金額は「同じ」です。(※3)
尚、「保険料納付猶予制度」「学生納付特例」となった期間の分は、納付可能な期限までに、保険料を納めることができなかった場合でも、「初診日の前日」までに「初診日の属する月の前々月分」までが免除されていれば、「未納」とはなりません。
また、「産前産後期間の保険料免除」については、保険料を全額納付しているので、当然に、未納ではない、というカウントになります。
まとめ
老齢基礎年金では、納めた保険料と年金額が比例しますが、障害基礎年金では、納めた保険料と年金額は比例しません。(※3)
老齢基礎年金は、保険料を納められなかった分だけ、年金額が一定の額から減り、障害基礎年金は、「納めていたこと」になれば、年金額は、障害の等級によって、一定の額が保障されます。
保険料の納付が難しくなった場合は、免除の申請を忘れないでください。
よろしくお願いいたします。
※1:生活保護法の生活扶助を受けている方等が対象になります。
※2:免除されていない部分については、納付している必要があります。
※3:障害厚生年金は、報酬比例で計算されますので、最低保障額を上回る場合、納めた保険料に比例します。
【こちらのコラムもご参照ください】
障害年金の納付要件について(国民年金の保険料を後で納付した場合)