障害年金の納付要件について
障害年金コンサルタント、社会保険労務士の中島です。
今回は、障害年金の納付要件について、という題で、書いてみたいと思います。
(複雑になることを避けるため、初診日において国民年金や厚生年金保険等の被保険者であったかどうか、加入内容からの年金額の増減、初診日のある月の前々月までの被保険者期間の有無、国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置政令、昭和61年3月31日以前に初診日、発病日がある場合、脱退手当金を受給している場合、基準傷病についての初診日、海外に在住していた方等、について詳細な記載はしません。また、20歳の誕生日の前日より前に、初診日のある方(厚生年金保険等に加入されていた方を除きます)は、こちらを参照ください。)
障害年金は、社会保険という「保険」の分野の一つであり、「保険」である以上、保険金を請求するために、「初診日の前日までに」「保険料を納めていたことになるか、どうか」が重要になります。そして、「保険料を納めていたことになるか、どうか」は「未納がどれだけ少ないか」もしくは「未納が無いか」、で判断しています。
その上で、この「未納」になるかどうか、は実際に、各月、国民年金の保険料を納めていたか、どうか、勤務先等を通して、厚生年金保険等に加入していたか、どうか、だけでなく、
1.初診日の前日までに、免除の申請をして、免除されていた月、もしくは、生活保護を受けられていた等で、法定免除になっていた月(全額免除でなければ、免除されていない部分は納付していること)
2.厚生年金保険等に加入されている方の配偶者として扶養に入っていた月
についても、「未納」とはなりません。
また、老齢年金を請求するには、「10年以上の加入期間」が必要、となりますが、障害年金では、請求できるか、できないか、については、加入期間の長さは問題になりません。(あくまでも、年金額を考慮せず、請求できるか、できないか、についての判断に限ります。)
そして、20歳の誕生日の前日のある月の翌々月以降に、初診日がある方は、◇
A.初診日のある月の前々月までの加入期間の中で、未納の期間が3分の1を超えてない
B.初診日のある月の前々月までの、直近1年間について、未納がない ※1※2
ことが、重要になり、AもしくはBの、どちらか一つを、クリアすれば、「保険料を納めていたこと」になり、障害年金の請求はできます。しかし、
・初診日のある月の前々月までの加入期間の中で、未納の期間が3分の1を超えている
・初診日のある月の前々月までの、直近1年間について、未納がある ※1※2
どちらにも該当している場合は、「保険料を納めていたこと」にならず、障害年金の請求はできません。
障害年金は、老齢年金と異なり、請求にあたり、「加入期間」が問題になりませんが、「初診日の前日」までの、「初診日のある月の前々月までの期間」の「未納の有無」、が重要になることがわかります。
「保険料を納めていたこと」になるか、どうか、は請求の前提であり、「納めていたこと」にならなければ、厳しく言えば、「保険料を払っていない保険会社に、保険金を請求することと同じ」となってしまいます。(当然に、保険金は支払われません。)
この点は、ご病気になってからでは、手遅れになります。保険料の支払いが難しい場合は、免除の申請だけはしてください。
よろしくお願いいたします。
◇:平成3年4月30日以前に初診日がある場合は、「初診日のある月の前々月までの加入期間」を「初診日のある月前の直近の基準月(1、4、7、10月)の前月までの加入期間」に、「初診日のある月の前々月までの、直近1年間」を「初診日のある月前の直近の基準月(1、4、7、10月)の前月までの、直近1年間」に、読み替え。
※1:初診日が、平成7年4月1日以降で、65歳の誕生日の前々日以前にある方が対象となります。法令上、加入を義務付けられていない未加入期間は「未納」とはなりません。
※2:60歳の誕生日の前日のある月以降に初診日があり、初診日のある月に国民年金に任意加入されていない方、厚生年金保険等に加入されていない方は、初診日のある月の前々月以前の直近の加入期間を含む1年間で判断します。
国民年金法 第三節 障害基礎年金
(支給要件)
第三十条 障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
一 被保険者であること。
二 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、六十歳以上六十五歳未満であること。
厚生年金保険法 第三節 障害厚生年金及び障害手当金
(障害厚生年金の受給権者)
第四十七条 障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。以下同じ。)があるときは、その日とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
国民年金法 附 則 (昭和六〇年五月一日法律第三四号) 抄
(障害基礎年金等の支給要件の特例)
第二十条 初診日が平成三十八年四月一日前にある傷病による障害について国民年金法第三十条第一項ただし書(同法第三十条の二第二項、同法第三十条の三第二項、同法第三十四条第五項及び同法第三十六条第三項において準用する場合を含む。)の規定を適用する場合においては、同法第三十条第一項ただし書中「三分の二に満たないとき」とあるのは、「三分の二に満たないとき(当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの一年間(当該初診日において被保険者でなかつた者については、当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの一年間)のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないときを除く。)」とする。ただし、当該障害に係る者が当該初診日において六十五歳以上であるときは、この限りでない。
第二十一条 初診日が平成三年五月一日前にある傷病による障害について、又は同日前に死亡した者について前条並びに国民年金法第三十条第一項ただし書(同法第三十条の二第二項、同法第三十条の三第二項、同法第三十四条第五項及び同法第三十六条第三項において準用する場合を含む。)及び第三十七条ただし書の規定を適用する場合においては、これらの規定中「月の前々月」とあるのは、「月前における直近の基準月(一月、四月、七月及び十月をいう。)の前月」とする。